医療関係者の方へ

ファブリー病 診断外来のご案内

慶應義塾大学病院では。2018年5月よりファブリー病・ライソゾーム病外来を開設しています。
ファブリー病・ライソゾーム病が疑われる患者さんがいらっしゃれば、ぜひご紹介ください。

患者さんの症状としては、下記のチェックリストをご参考にしてください。


ファブリー病の症状チェックリスト

  1. 幼少期から、手足の指先の痛みが続いたり、汗が出にくい。
  2. 特にお腹、お尻、陰部に赤紫色の発疹がある。繰り返す消化器症状(下痢・腹痛)がある。
  3. 難聴があり、心肥大や腎障害(タンパク質、腎機能障害など)を併発している。
  4. 50歳以前に原因不明の脳梗塞を発症し、親族も同様の症状がある方がいる。
  5. 原因不明の心肥大の指摘があり、手のひらや足の裏に過去・現在強い痛みのある方。
  6. 原因不明の腎障害(タンパク尿、透析)指摘がある。尿沈殿でマルベリー小体を認める。
  7. 60歳以前に、心疾患、腎疾患、脳血管障害が原因で、亡くなった家族がいる。
  8. 心肥大の指摘がされていて、タンパク尿が出てきた。親族も同様の症状がある方がいる。

ファブリー病の概要

ファブリー病は、イギリスの皮膚科医師アンダーソン(Anderson)とドイツの皮膚科医師ファブリー(Fabry)により別々に「びまん性体幹皮角血管腫」として1898年に初めて報告されました。この病気は、細胞内のリソゾーム(ライソゾーム)の酵素がなくなったり、酵素の働きが低くなることで、体のなかでさまざまな症状が引き起こされる「代謝異常症(たいしゃいじょうしょう)」の一つです。この病気の原因は、ある遺伝子の変異が原因です。

からだの中でリソゾームの酵素(α-ガラクトシダーゼ(あるふぁ‐がらくとしだーぜ))がなくなると、からだの細胞に必要のない糖脂質(とうししつ)(グロボトリアオシルセラミド(Gb‐3)、別名セラミドトリヘキソシド:CTH))が溜まるため、手足に激しい痛みを感じたり、皮膚や尿の異常、また下痢や脳梗塞、心臓の病気など、全身に症状が現れます。病気が悪くなると腎臓、心臓、脳などに臓器障害を来たし、突然死することもあります。

ファブリー病は今まで、X染色体劣性遺伝(エックスせんしょくたいれっせいいでん)と言われていたため、主に男性がファブリー病になると考えられていました。しかし、近年では女性でもファブリー病に特有の臨床症状がみられるため、X染色体性遺伝とされています(Kobayashi M et al. (2008) )。通常、古典型ファブリー病は、欧米では欧米で40,000(男性)~110,000人に1人の割合といわれていますが、最近でのマススクリーニングでは、もっと多くの患者さんがいるとの報告もあります。また、心臓のみに現れる心ファブリー病も、普通考えられるよりも多く存在していると言われております。後に説明示しますが、鹿児島大学のグループでは左心室肥大の男性230例中7例(3%)にファブリー病患者がいることを報告しています(Nakao S et al. (1995) )。遺伝子の異常があるため、遺伝子を持った本人から、子供に伝わる可能性があり、家系の中で代々受け継がれていくケースも多くみられます。

また、ファブリー病は国が難病(特定疾患)と指定している「ライソゾーム病」に分類されている病気です。ファブリー病は、適切な治療や生活環境を整えることで、病気の進行を遅らせ、日常生活における生活の質の改善を期待することができます。

心ファブリー病
心ファブリー病を含むファブリー病は、循環器内科領域においては心筋疾患のなかで「特定心筋症」として分類されており、稀な病気と考えられていました。心ファブリー病とは、ファブリー病の亜系で、主に心臓の筋肉に、糖脂質が溜まる病気です。
最初は、心臓の筋肉が厚くなり、肥大型心筋症(ひだいがたしんきんしょう)のように心肥大がみられるが、病期の進行とともに一部もしくは全体の左室壁運動低下が出現し、拡張型心筋心筋症(かくちょうがたしんきんしょう)となり、心不全や不整脈をおこします。

疫学と分類

ファブリー病の分類は大きく分けて、3つに分類できます。更に、男性は古典型と、亜型(表1)に分類され、女性はヘテロ接合体とされております。

古典型 (男性)
「ファブリー病の症状」が、ほとんど全て出現します。α-ガラクトシダーゼの酵素活性はほとんどありません。

亜型 (男性)
発症年齢が遅く、症状が一部に限られる場合です。そのうち、心ファブリー病は主に心臓のみに症状があらわれ、腎ファブリー病は主に腎臓に症状があらわれます。
古典型に比べわずかに酵素活性を持つと言われています。

ヘテロ接合体(女性患者)
重い症状を示す人から、ほとんど症状を示さない人まで、いろいろです。しかし、年齢が進むと多くの人に何らかの臓器障害(心臓、腎臓、神経など)が出現すると言われています。最近は、女性のファブリー病の患者も注目されております。
表1.ファブリー病の分類
(男性患者の分類)
病型 古典型 亜型
腎型亜型 心型亜型 CNS亜型
発症年齢 幼少期(4~8歳) >25歳 >40歳 >30歳
平均死亡年齢 40歳前後? >60歳 40歳
被角血管腫 ++(80%前後) ±
四肢の知覚異常 ++ ±
発汗減少症 ++ ±
角膜混濁 ++ ±
心障害 虚血/心筋梗塞 左室肥大 左室肥大
脳血管障害 一過性脳虚血発作脳卒中 一過性脳虚血発作脳卒中
腎障害 腎不全 腎不全 軽度蛋白尿 軽度蛋白尿
α-GAL活性 <1% <5% <10% <10%

(衞藤 義勝.日本内科学会雑誌.98巻4号.p.875-882(2009)より表を引用)

ファブリー病の症状

ファブリー病は、細胞内リソソーム(ライソゾーム)の加水分解酵素の一つである「α-ガラクトシダーゼ(α-GAL)」という酵素の遺伝的欠損や活性の低下により起こる病気です。

この酵素は「GL-3(グロボトリアオシルセラミド、別名セラミドトリヘキソシド:CTH)」という糖脂質を分解する働きを持ちますが、活性が不十分だと分解されなかったGL-3が徐々に全身の細胞や組織、臓器に蓄積していきます。蓄積したGL-3がある一定量を超えると、疼痛を含む神経症状、被角血管腫(ひかくけっかんしゅ)、角膜混濁(かくまくこんだく)などのほか、心機能障害、腎機能障害など、さまざまな症状が出現します(表2)。

表2.ファブリー病の症状
障害される臓器 症状
脳血管障害(のうけっかんしょうがい)
皮膚 低汗症(ていかんしょう)、被角血管腫(ひかくけっかんしゅ)
神経 四肢疼痛(ししとうつう)、知覚障害(ちかくしょうがい)
角膜混濁(かくまくこんだく)、白内障(はくないしょう)
心臓 心肥大(しんひだい)、不整脈(ふせいみゃく)
腎臓 タンパク尿(たんぱくにょう)、腎不全(じんふぜん)
消化器 腹痛(ふくつう)、下痢(げり)、便秘(べんぴ)、嘔吐(おうと)

ファブリー病の診断

次のような診断方法をいくつか組み合わせて、ファブリー病の確定診断を行います。

症状の確認
「ファブリー病の症状」であげられているような、ファブリー病に特徴的な症状があるかどうかを調べます。
酵素診断
血液中の血漿(けっしょう)、白血球、あるいは尿中のα-ガラクトシダーゼ(α-GAL)活性の測定を行います。酵素活性の欠損または低下が認められれば確定診断となります。
病理診断
皮膚や腎臓、心臓などの組織のごく一部を採取して、異常があるかどうかを顕微鏡で調べます。
生化学的診断
主に血液や尿を採取し、そのなかの糖脂質GL-3が蓄積しているかを調べます。臓器の組織中のGL-3の量を調べることもあります。
遺伝子診断
血液や皮膚の細胞を使って、遺伝子を検査します。女性のファブリー病では、酵素活性のみでは診断できない場合があり、このようなときに遺伝子診断が行われることがあります。

治療

ファブリー病の治療には、酵素補充療法と症状を緩和させる対症療法があります。

対処療法
疼痛に対しては、ジフェニルビダントイン(フェニトイン)およびカルバマゼピンが有用であり、現在も広く使われています。腎障害に対しては、ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬、ARB(アンジオテンシンll受容体拮抗薬)が用いられています。ファブリー病に対しては、伝導障害に対する抗不整脈薬のほか、消化器症状、中枢神経症状に対して、症状にあわせて薬物療法が行われます。末期腎不全に対しては腎移植、血液透析を行います。

酵素補充療法
ファブリー病は、「α-ガラクトシダーゼ」という酵素が欠損したり、活性が低下しているために起こる疾患です。酵素補充療法は、体内に足りない「α-ガラクトシダーゼ」を点滴で補充し、からだに蓄積している、ヒトにとって不要な糖脂質(GL-3)を分解する治療法です。これにより、症状の改善や病気の進行をおさえることができます。

日本では現在、2つの遺伝子組換え製剤がファブリー病の酵素補充療法治療薬として認められています。くすりは、2週間ごとに外来に受診し、点滴で補充します。1回の投与につき約40分~3時間程度かかります。当院では、3号館南棟(免疫包括医療センター)にて、”快適に” 酵素補充療法を行うことが出来るようになりました。

(引用元:http://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000647.html